何事にも向き不向きがあると思う。たとえば、転職も同じである。
しかし、実際に転職する人は、転職自体を向き不向きでとらえることは少ないに違いない。誰しも転職したい理由はあるし、転職して成功することを願っているはずだからである。よって、結果から見て、転職には成功と失敗があることには納得するとしても、「あなたは不向きだから転職しないほうがいい」というアドバイスは、一般にはにわかに受け入れがたいのではないだろうか。
■ 「転職に向いている人」とは
しかし現実は、転職に失敗する人は、同じような理由でその失敗を何度も繰り返している。私は仕事柄、現場で多くのビジネスマンの転職ビフォーアフターに接しているが、それが正直な実感である。ようは人の職務経歴書を読んだり、本人による経歴説明を聞くのが、私の仕事の一部であるのだが、失敗を繰り返す人は、運がないだけではなく、やはり転職にはあまり向いていない共通の特徴があるように思う。客観的に見ると、そうした人は今の会社に留まったほうが結果としてうまくいくのではないかと思うことが多い。
そこで、転職に向いている人の特徴について、私の考察をご紹介したい。総じていえるのは、転職に向いている人は、新しいものが好きである。たとえばネット通販でよく買い物をし、何かあると、すぐグーグル検索をして調べるタイプである。(結果、みんな同じ情報源にたどりつき、似たような意見を持っているのも特徴である。)人付き合いが比較的うまく、どんな場所でもすぐ眠れるタイプでもある。好奇心が旺盛であるので、新しい環境への順応も早い。また何事もリセットすることに躊躇がなく、判断もアクションも早い。走りながら考えることができる人である。一方、我慢が足りないと評されることがあり、熱しやすく、冷めやすい人が多いように思う。
ここで少しまとめてみたい。転職に向いている人は、転職することで自らの成功に一歩一歩近づくイメージを持っている人である。つまり、どんな場合でも転職で一気にすべての問題が解決するわけではないことを知っている。(転職に向かない人は完ぺき主義であることを考えると、その逆ともいえる)また、転職に向いている人は、想定外のことが起きても、総合的に評価できるならば柔軟に変化を受け入れられる。だから結果としてあまり文句をいわず、現状を少しでも改善しようと、地道に問題解決に取り組んでいるものだ。
■ 「転職に失敗する人」とは
一方、どんなに優秀なビジネスマンでも、転職を機会にだんだんとビジネスマンとしての格が下がっていく人も多い。あきらかに転職に向いていないのであるが、本人は必ずしもそうは思ってはいない。やはり「足りないもの」にすぐ目が向くタイプは、転職には向いていないようだ。実際に新しい雇用先には、前職には当たり前のようにあったものが見当たらないということがよく起きる。たとえば、前職は出張にグリーン車を使えたが、新しい会社ではグリーン車が使用禁止だったりする。全員普通指定席で出張するという規程であるが、そんな細かく小さなことでも不満に感じる人は意外に多い。グリーン車に乗れないから転職するという人はいないだろうが、そうした細かい不便さが積もり積もって、仕事をポジティブにとらえられなくなっている人は多い。
転職に向かない人であればあるほど、結局「転職」という手法で自らのキャリアをリセットし、再スタートを切ることを望んでいる。よりいい条件で転職することに執着する本質的な理由は、転職する理由の体裁を整えたいという気持ちが見えるのだ。本来、仕事で直面したいろいろな課題、トラブルは、「その職場にとどまることを前提」に問題解決していく必要があり、それを乗り越えた先に、職場の人たちとお互いの信頼関係ができたり、自分のスキルアップも実現するものだ。
転職に向かない人は、そうした課題やトラブルと正面からぶつかることを避けるタイプが多いように思う。そして転職に向かないのに転職するから失敗するという、まさに悪循環の始まりである。(転職の回数が多い、いわゆるジョブホッパーと言われる人に多い状態である)
今、転職を希望している人の8割は、転職の適性がないため、今の会社に留まったほうが正解であるというと、それは言いすぎだろうか。ただし、正直なところ、転職の世話をする立場にある私の実感は、そんなものである。現状を不満に感じるのではなく、まずは自分の課題を今の職場にとどまる前提で解決できるよう、集中することがまずは大切ではないだろうか。
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